
【 2021年度 事業計画 】
1事業目的
「子どもの問題研究所」(以下、「子ども研」)は、人の生涯にわたって生じる精神的課題への 対処方略として、幼少期からの「子育ち・子育て」援助・支援を位置づけ、2003 年の設立当初 より子どもの主体性と自由性を主軸においた具体的、実践的活動を継続してきました。これと 相まって、人が共に地域の中で育つことのできる社会の創造に寄与する課題を提言してきました。
現代の多くの母親は、核家族化、少子化の時代状況の中で育ち、幼い頃から具体的な子育て に触れる機会がないまま成長しています。しかも人間関係がほとんど解体した地域社会の環境 の中で子育てをせざるを得ません。スマホに依存した子育ては場当たり的で、子どもの将来的 な発達が見通せません。それによって子育て不安や孤立感を抱く母親が増加し、頻発している 児童虐待の心理的背景になっています。精神的課題を抱える母親を支える「ヤングケアラー」 とよばれる子どもの存在が知られるようになっています。
学校教育現場においては、「いじめ」や不登校児童・生徒の増加、貧困家庭や発達障害児への 対応の課題が深刻化しています。
このような状況に対処するため、「子ども研」は課題を抱える母親への子育て支援、心理・教 育相談に関する学校教育現場へのスーパービジョン、また「茨精研ICCAM」と協働での研 究活動を通し、「子育ち・子育て」課題に係る事業を継続してきました。
2020 年度は新型コロナウィルス(以下、コロナ)の蔓延によって、外出制限や学校の休校措 置といった対策が「子育ち・子育て」に及ぼした影響が少なくありません。
問題であるとしてきた母親の孤立化や地域崩壊が、コロナ禍では新しい生活様式として容認 される状況になるのです。コロナが収束しても、新しい生活様式がスタンダードになることが 予想されます。物理的距離があってもいかに人と人とがつながっていけるのかというコロナ後 の社会を見据えた「子育ち・子育て」支援の具体的方略の構築が課題です。
2021 年度は各事業を通して、コロナ禍における「子育ち・子育て」の何がどのように変わっ ているのか実態把握を進め、今後の支援課題の提示につなげたいと考えます。
2事業内容
1)相談員派遣事業
2020 年度に引き続き、笠間市、桜川市、行方市、潮来市において実施する乳幼児健康診査 (以下、健診)に相談員を派遣し、子どもの発達課題や保護者の抱える育児課題への早期対 応、個別の育児相談を実施します。
2020 年度は各市でコロナ感染防止のため、受診者を時間差で呼び出すことで密を回避し たり、対応の際は消毒や飛沫防止の対策をするなど実施方法を工夫しました。また、2 歳児 の歯科健診は歯科医に委託する、保健師による受付時の問診或いは最後の保健指導のいずれ かを省略する等、実施内容の変更を余儀なくされることになりました。個別の育児相談にお ける母親の相談内容からは、コロナ対策で子育て支援施設が休止となり子どもの遊び場がな い、外出する事への不安感により孤立している母親が増えているといった状況が見えてきま した。
2021 年度は、各市のコロナ禍における健診の実施内容を点検し、母親からの相談内容を集 約して、健診の在り方や「子育ち・子育て」支援の課題を検討します。
また、健診を経て発達障害等が発見された子どもの療育の場である、日立市さくらんぼ学 級における支援員へのスーパーバイズ及び保護者研修会講師としての対応を継続します。療 育の現場では、児童発達デイサービスの事業所が増加し、利用も増えている一方、療育内容 の専門性、地域とのつながりの希薄化が問われています。このことは障害者総合支援法の施 行により、障害児者の地域福祉の方向が「サービス業」に移行している状況に通じるもので あり、2021 年度も実態把握と情報収集を進めます。
2)学校教育相談、児童・生徒指導支援活動
2020 年度に引き続き、リリー文化学園リリーベール小学校(以下、ベール小)へスクール カウンセラーを派遣します。ここでは課題のある児童への具体的対応方法について教師に助 言することを中心に、必要に応じ児童、保護者、教師へのカウンセリングを実施しています。 ベール小においても、コロナ禍により分散登校やオンライン授業の開始など学校生活環境 の変化や、親の就労様態の変化等を受け、体調不良を訴えたり欠席する児童が前年度より多 くなる傾向がありました。2021 年度は養護教諭との連携を中心に、そのような状況の実態把 握をしていきます。
3)研究活動
2020 年度は「子ども研」運営会議を月 1 回土曜午前に設置するとともに、子育て支援関 係者にアドバイザーとしての参加を呼び掛けました。運営会議と併せ「茨精研ICCAM」 と協働で「風(FOO)」地下室を活用した貧困家庭の子ども支援事業の実施を検討しました。 しかし、コロナの影響を受け事業の展開を見合わせることになりました。限られた空間を利 用しての実施が困難なことから、事業内容そのものの見直しが必要となったからです。2021 年度は1)、2)の事業における実態把握や情報収集を踏まえ、今後の「子ども研」の事業展 開を図っていきます。
3「研究所」の運営
1)所在地
水戸市見川1丁目1183番地の2 メゾン・ド・リヴィエールB102
2)「研究所」開設日
原則として、毎週水曜日及び土曜日午後
ただし、留守電及びFAXによる対応は随時行う
3)「子ども研」運営会議
原則として、毎月第1土曜日午前
4)職員
職名 | 氏名 | 所属・資格等 |
所長 | 高橋 寿子 | 精神保健福祉士・レクリエーションコーディネーター 市町村乳幼児健康診査等相談員派遣対応 |
主幹相談員 | 高松 由加 | 常磐大学学生相談員 市町村乳幼児健康診査相談員 |