子どもの問題研究所

【 2023年度 事業計画 】

1事業目的

「子どもの問題研究所」(以下、「子ども研」)は、人の生涯にわたって生じる精神的課題への対処方略 として、幼少期からの「子育ち・子育て」援助・支援を位置づけ、2003 年の設立当初より子どもの主体性 と自由性を主軸においた具体的、実践的活動を継続してきました。これと相まって、人が共に地域の中で 育つことのできる社会の創造に寄与する課題を提言してきました。

現代の多くの母親は、核家族化、少子化の時代状況の中で育ち、幼い頃から具体的な子育てに触れる 機会がないまま成長しています。しかも人間関係がほとんど解体した地域社会の環境の中で子育てをせ ざるを得ません。スマホに依存した子育ては場当たり的で、子どもの将来的な発達が見通せません。それ によって子育て不安や孤立感を抱く母親が増加し、頻発している児童虐待の心理的背景になっています。 精神的課題を抱える母親を支える「ヤングケアラー」とよばれる子どもの存在も知られるようになっていま す。

学校教育現場においては、「いじめ」や不登校児童・生徒の増加、貧困家庭や発達障害児への対応の 課題が深刻化しています。

このような状況に対処するため、「子ども研」は課題を抱える母親への子育て援助・支援、心理・教育相 談に関する学校教育現場へのスーパービジョン、また「茨精研ICCAM」と協働での研究活動を通し、「子 育ち・子育て」援助・支援課題に係る事業を継続してきました。

2020 年度に蔓延した新型コロナウィルス(以下、コロナ)は、収束の気配が見えつつあるとは言え、いまだ感染防止対策や行動制限が求められる状況にあります。

「子ども研」では 2022 年度まで、コロナ禍での「子育ち・子育て」の情報収集と実態把握、それに対す る援助・支援の課題提示を目的として事業を展開してきました。

2023 年度はその結果を踏まえ、コロナ後の社会を見据えた「子育ち・子育て」援助・支援の具体的方 略の構築を目的とし、各事業を展開する中で課題を検討していきたいと考えます。

2事業内容

1)相談員派遣事業

2022 年度に引き続き、笠間市、桜川市、行方市、潮来市において実施する乳幼児健康診査(以下、健 診)に相談員を派遣し、子どもの発達課題や保護者の抱える子育て課題への早期対応、個別の育児相談 を実施します。

コロナ禍の中、各市で感染防止のため、受診者を時間差で呼び出すことで密を回避したり、対応する際 は消毒や飛沫防止対策を徹底するなど実施方法を工夫しました。また市によって差異はありますが、2 歳 児歯科健診は歯科医に委託する、保健師による受付時の問診或いは終了時の保健指導のいずれかを省 略する等、実施内容の変更を余儀なくされました。その結果子どもの発達を的確な年齢で把握できない、 医療機関によって発達面の確認に偏りが生じ、支援の必要な子どもへの対処が遅れる状況が出てきてい ます。個別の育児相談における母親の相談内容からは、コロナ対策で子育て支援施設が休止となり子ど もの遊び場がない、外出する事への不安感により孤立している母親が増えている、学校がオンライン授業 になって子どもが家にいるので仕事に支障が出たりイライラ感が増す といった状況が見えてきました。

2023 年度は、引き続き各市においてコロナ後を見据えた健診の在り方や「子育ち・子育て」援助・支 援の課題を保健師とともに検討していきます。

健診を経て発達に課題があることを指摘された子どもの療育の場である、「日立市さくらんぼ学級」に おける支援員へのスーパーバイズ及び保護者研修会講師としての対応を継続します。療育の現場でも、 実施回数や参加人数が制限されています。支援者にとってはその状況の中で援助・支援の質を維持する ための努力が求められ、親にとっても子どもと家にいる時間が長くなり、子育てへの負担感が増しています。 療育の場が「子育ち・子育て」援助・支援にとって必要性の高い場になっているかを実感します。

2023 年度はコロナ蔓延以前の通常スケジュールでの実施が予定されています。 引き続き実態把握と情報収集を進め、コロナ後の療育の課題を検討していきます。

2)学校教育相談、児童・生徒指導支援活動

2021 年度に引き続き、リリー文化学園リリーベール小学校(以下、ベール小)へスクールカウンセラー を派遣します。ここでは課題のある児童への具体的対応方法について教師に助言することを中心に、必要 に応じ児童、保護者、教師へのカウンセリングを実施しています。

ベール小においてもコロナ禍により、分散登校やオンライン授業の開始、行事の縮小や中止など学校生 活環境が変化、また親も在宅勤務になるなど就労様態が変化した影響から、体調不良を訴えたり欠席す る児童が多くなる傾向を教師たちと話す中で確認しています。

一方で保健室登校をしていた児童が、人数の少ない教室だったら入れる、オンライン授業なので参加 できることを体験したことから自信を取り戻し、順調に登校できるようになった状況もありました。

コロナ禍における学校教育現場の実態から、一人ひとりに応じた教育の在り方を検討する機会になると 考えます。

3)研究活動

2022 年度に引き続き、「子ども研」運営会議を月 1 回土曜午前に通年で設置します。

運営会議と併せ「茨精研・ICCAM」と協同で、コロナ後の「子育ち・子育て」援助・支援の課題を反映 させた事業内容の検討を図っていきます。

3「子ども研」の運営

1)所在地

水戸市見川 1 丁目 1183 番地の 2 メゾン・ド・リヴィエールB102

2)「子ども研」開設日

原則として、毎週水曜日及び土曜日午後。 ただし、留守電及び FAX による対応は随時行う

3)「子ども研」運営会議

原則として、毎月 1 回土曜日午前

4)職員

職名 氏名 所属・資格等
所長 高橋 寿子 精神保健福祉士・レクリエーションコーディネーター
市乳幼児健康診査等相談員派遣対応
主幹相談員 高松 由加 常磐大学学生相談員
市乳幼児健康診査等相談員派遣対応