風をはこぶ

「なに色ですか?あなたの心のサングラス」

これは、光風会のキャッチフレーズです。 精神障害は、見た目にはわかり難い「障害」です。
私たちは、私たち自身が「障害者に対する誤解や偏見」を持っていることを問い続ける必要があると考えています。
「障害者」の見方・捉え方についての新たな「気づき」を得るために啓発活動を行う必要があると考えています。
そのために、講演会や学習会、ワークショップ、フォーラムなどを企画・開催してきました。

 

社会福祉法人光風会創立20周年記念企画

 

1 地域交流啓発事業2 学習会等実施内容3 地域交流■ 参考資料

Ι 地域交流啓発事業

地域啓発活動として、以下のようなフォ-ラム・シンポジウムを開催してきました。

 

2019年

11月24日

今、私たちは何を見失っているのか

地域福祉と精神科医療との「新たな連携」に向けて個人情報の課題から考える

 水戸プラザホテル

アンフィシアター

 2012年 障害者制度改革を[頓挫」させないために
ー障害者福祉部会の成果と課題を踏まえてー
 茨城県保健衛生会館
茨城県看護協会研修室
 2010年  「障害者の人権について PARTⅣⅢ」
精神障害を抱える長期入院の存在と現実的課題
 水戸プラザホテル
アンフィシアター
 2009年 「障害者の人権侵害について」PARTⅢ
聞こえる声とともに生きる課題
 水戸プラザホテル
アンフィシアター
2008年 「障害者の人権について PARTⅡ」
精神障害者の長期入院をどう考えるか
 かんぽの宿
会議室
2007年 「障害者の人権侵害についてPARTⅠ」
国際生活機能分類(ICF)の課題
障害者権利条約と差別禁止法
 ホテルニュー白亜紀
2006年 「グループホームのQOLと第3者評価としてのISO」  水戸市三の丸公民館
2005年 「精神障害者ピアホームヘルパーが創りだすもの」  茨城県歴史館講堂
2004年 「幻聴の科学から『聞こえる声』の体験の共有へ」  水戸プラザホテル
アンフィシアター
2003年 「ヒアリング•ヴォイシス」 ー聞こえる声とともに成長する道ー 水戸プラザホテル
アンフィシアター
2002年 「頭の中のこえ」ー 幻聴を科学する ー  水戸プラザホテル
アンフィシアター
2001年 「愛をつむぐ医療とケア」
ー精神障害者の地域生活支援の原点としてー
 水戸プラザホテル
プラザボールルーム

光風会として、特に主張したいことを以下にまとめました。

【 「聞こえる声」と共に生きる -ヒアリング・ヴォイスー】

「『声』が、自分の行動を指図してくる」。
「本を読みたいのに、幻聴が聞こえてきて集中できない」。
と言うユーザーがいます。
教科書には、「幻聴についての訴えは取り合わないこと」と載っていました。
しかし、「聞こえる声」で辛いのは事実です。
光風会では、2002年よりの3年間の地域交流啓発事業で、ヒアリング・ヴォイシズ(以下略「HV」)の取り組みを
学ぶ場を設定してきました。
幻聴が「幻」ではなく、実際にその人に「聞こえている」こと、聞こえている本人が「声」に対処できるようになる
治療・援助・支援が、専門家には求められていること等を学びました。

ヒアリング・ヴォイシズ(以下略「HV」)は、1987年にオランダで始まった活動です。現在では、ヨーロッパを中心に、約20カ国で活動が展開されています。 「HV」では、以下のことを研究活動によって証明しています。
*自分自身が主となり、自分なりの幻聴への対処法を見つけること
* 薬によって、幻聴を抑えることだけにとらわれないこと
* 「こえ」をコントロールすることによって、上手く「こえ」と付き合っていくこと

【 障害とは? -ICFの捉え方-】

2007年度の地域交流啓発事業は、「国際生活機能分類(ICF)の課題-人権の視座からー」をテーマに、世界保健機関
(WHO)が提唱する障害の捉え方を学びました。

ICFについて、以下のような提起がされました。
*人間の健康を考える上では、地球に住む全ての人の生活機能をどう分類するかが課題となってきた
*障害を個人の現象と捉える「医学モデル」と、障害を社会の問題と捉える「社会モデル」を統合した見方  
障害とは、人と物理的環境および社会的環境との相互関係の結果生じる多次元の現象
支援者の課題は、私たちが関わることそれ自体が、ユーザーにとっての環境因子であるという認識をもつことの重要性です。

【 差別とは? -障害者権利条約-】

午前の部に続いて、午後の部では、「障害者の権利条約と差別禁止法―障害のある人の人権確立に向けてー」をテーマに、学習しました。
障害者権利条約ができるまでの歴史的経過、ナチスドイツが教訓になったこと等の説明の後、以下のような提起がされました。
*障害者だけの特別の権利を創設するものではなく、全ての人が同じスタートラインに立つ権利を確立するもの
*非差別平等の実質的確保として、「障害の概念に環境との関連を示唆」、「手話の言語性の確認」、「アクセシビリティ」、
「合理的配慮の否定は差別」等の、新しい概念を採用した障害者の権利の実現のために、社会の側が変更や調整をしなければならないのに、何も「しない」、「していない」ことは、合理的配慮の不在であり差別だという考え方です。

しかし、どこまでが許されて、どこからが差別なのかの基準は、現在の日本の法律にはありません。

誰でも、「していないつもりでしている差別」には気づかない。差別禁止法として、基準となる「ものさし」が必要だということを学びました。

【 「再犯の疑い」をかけられるということ -医療観察法-】

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下、「医療観察法」)が、20057月に試行されました。 2008年、この法律について一市民として熟知するための学習会を企画・開催しました。
私たちは、「医療観察法」について、二つの重大な問題性を看過できませんでした。一つは、「死ぬまで退院できない」事態をつくりだす危険性をはらんでいること。二つ目は、「再犯のおそれ」を、誰が何を根拠に判断できるのか不鮮明であることです。

「医療観察法」を知り、法の運用を監視しなければ、「地域で」「共に生きる」といったことが、「ことば」だけで、実態的な精神障害者支援とはなり得ないと考えています。

【 子どもの権利】

NPO「茨精研」は、19889月に発足してから23年間、「インクルーシブ教育=障害児と共に生き・共に学ぶ教育」の実現を主張 してきました。

20098月には、「6歳の春を分けないでin水戸」を企画・開催しました。
障害者権利条約では、「障害のある子どもを一般教育制度から排除することなく、インクルーシブな教育を促進する」としています。障害児・者と地域で共に生きていくためには、現在の分離別学体制である特別支援教育ではなく、子どもの頃から「一緒の学校」を前提とするしかあり得ないことを、学習会を通して確認しました。

光風会は、NPO「茨精研」と協働の調査・研究結果をふまえ、昨今の「子育て状況」について、孤立感や不安感を抱きながらの親の子育てが児童虐待の心理的背景にあり、後の不登校、引きこもり、子どもの自殺等々の社会病理現象を生み、将来の精神障害の要因につながると提言してきました。

20108月には、「現代社会における『子育て』『子育ち』を考える」、12月には「児童虐待の予防と再発防止の現状と課題」をテーマとした学習会を企画・開催しました。

虐待防止の課題を社会状況、教育問題の視点から検討することを、今後も継続していきます。

1 地域交流啓発事業2 学習会等実施内容3 地域交流■ 参考資料

Ⅱ 学習会等実施内容

NPO「茨精研」(ICCAM)や光風会が企画・開催した学習会から、主なものを掲載します。

【学習会等実施内容】

年度 学習会名 内容
2001 ICCAMカレッジ「子どもに笑顔を返して」 不登校現象の心理的背景思春期における精神医療対応
2002 ICCAMカレッジ「子どもに笑顔を返して」 児童虐待の心理的背景と
予防策、支援について
講演・研修「先生教えて、あの子のこと」 心の問題を抱えた
子どもたちへの向き合い方
2003 ICCAMカレッジ「『衣』と『こころ』」
ICCAMカレッジ「『食』と『こころ』」
2004 ICCAMカレッジ「こころの問題への介入」 「心のノート」について
2005 ICCAMカレッジ 障害者自立支援法(案)について
ICCAM学習会 障害者自立支援法(案)について
2006 ICCAMカレッジ「早期発見・早期治療を問う」 発達障害者支援法について
ICCAM学習会
「点検しよう あなたのわたしの NPO」
NPOについてのワークショップ
2007 ICCAM学習会「おにぎり研修会」 防災の課題について
2008 ICCAM・光風会 学習会 医療観察法について
2009 学習会「6歳の春を分けないでin水戸」 障害者の権利条約からみた特別支援教育の問題点
2010 学習会「現代社会における『子育て』『子育ち』を考える」 児童虐待の課題
学習会「児童虐待の予防と再発防止の現状と課題」 児童虐待の課題

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Ⅲ 地域交流

① 陶炎祭・匠のまつりへの参加

毎年、笠間の芸術の森公園では、春の「陶炎祭」と秋の「匠のまつり」が開催されます。笠間焼工房「陽(yoo)」は、作陶をしている事業所として登録参加しています。
障害者のイベントではありませんし、精神障害者の事業所であることを強調しているわけでもありません。「陽(yoo)」で作陶した「商品」で勝負する舞台です。それが、メンバー支援 にもつながると考えています。

「社会的弱者である障害者が作った物だから」と言う前提は、それ自体が差別です。モノをモノとして見て評価する、その評価の内容で、モノを見る人の眼力も評価される関係が成 り立てば良いと考えています。

② ゆらゆら展

「ゆらゆら展」は、「陽(yoo)」のメンバー、スタッフ、さらには協賛陶芸家、書道家、彫刻家等の参加によるグループ展です。茨城県陶芸美術館などを会場に、2004年より隔年で  開催してきました。
創作活動で製作した個々の作品を実名で発表し、精神障害者のカミングアウトを現実化する機会を地域に創り出すとともに、精神障害当事者、及び指導スタッフ、地元の作家等  によるグループ展の開催は、ノーマライゼーションの理念の具体化を提示することと考えています。

③「餅つき」交流会

「餅つき」交流会は、「陽(yoo)」が作業所だった時代から、毎年行なってきました。   笠間保健サービスセンターの建物を共有する、笠間市の教育相談室の生徒たちや、「ゆらゆら展」の協賛陶芸家、お世話になっている近所の自動車修理会社、光風会の継続的 支援者に参加を呼びかけてきました。

今後も、関係する教育・福祉の方々との交流の「場」の創造、「食」を通して、協働の体験を増やすこと、支援者に対し光風会の活動を情宣する機会として、「餅つき」交流会を継続していきます。

1 地域交流啓発事業2 学習会等実施内容3 地域交流■ 参考資料

■ 参考資料

第10回「“風”をはこぶ『パネルディスカッション』」

障害者の人権侵害について PART Ⅳ
― 精神障害を抱える長期入院者の存在と現実的実践課題 -

 
茨城県では、2009年9月現在、精神科病院入院の方は6,265人。その内の1年以上入院いている方の中で、818人が退院可能といわれています(2009度県報告)。「精神障害者退院促進支援」に関する事業は、2003(平成15)年度より県委託事業として開始しましたが、7年が経過した現在も、退院促進
支援への具体的・実際的な協力病院は、半数に留まっています。精神障害者の歴史はこれまで、殺戮、隔離・収容といった「悲惨」な現実を繰り返してきました。 医療関係や福祉関係の専門家が、精神障害者の長期入院を結果的に「仕方がない」と支えている事実に、退院促進事業の委託を受けて活動を継続してきた私たちは、「気づき」を得ました。
私たちは何を「為す」べきなのか。
長期入院の精神障害者の存在とその状況について、行政・福祉・医療関係者が共通認識を持つことが前提です。

第9回風をはこぶシンポジウム

障害者の人権侵害についてPARTⅢ
聞こえる声とともに生きる課題

精神障害は、身体障害や知的障害等とは違い、見た目には大変わかり難い「障害」です。そのために、私たちは自分自身が持っている「障害」に対する誤解や偏見等への「気づき」が得られる啓発活動を行う必要があると考え、実行してきました。
2002年よりの3年間に、障害の特徴とされる「幻聴」について新たな世界的取り組みを学ぶ場として、以下のような講演会やフォーラムを企画・実施しました。

* 2002 11月 講演会「頭の中の声幻聴を科学する

* 2003 11月 講演会「ヒアリング・ヴォイシズ聞こえる声とともに成長する道

* 2004 11  フォーラム「幻聴の科学から『聞こえる声』の体験の共有へ」

1987年、オランダで始まった「ヒアリング・ヴォイシズ」は、「幻聴」という医療モデルの言葉と概念を捨て、「聞こえる」体験をありのままに受け止める新しい実践と研究のアプローチです。今では、ヨーロッパを中心に約20ヵ国で活動が展開されています。
今回は、最新の国際情報を踏まえて、精神障害者と共に生きる課題について検討します。
テーマ:「幻聴」に関する世界の動向
~ インターヴォイス国際会議報告 ~(2008年:オーストラリア、2009年:オランダ)

 

【講      師】    藤本  豊 (日本臨床心理学会「HV(Hearing Voices)」小委員会)   
【司会・進行】   松本 直行 ([社福]光風会 地域活動センター「光(KOO)」 施設長)

 

2部   シンポジウム
  テーマ:ICF(国際生活機能分類)で捉える 「聞こえる声」と共に生きる課題
【シンポジスト】       鈴木 久義  (昭和女子大学作業療法学科・作業療法士)
藤本  豊  (東京都中部総合精神保健福祉センター・臨床心理)
的場 政樹  (医療法人直志会袋田病院・精神科医)
【指定討論者】       弘末 明良  (元茨城県立友部病院長)

  

【コーディネーター】   朝田  隆  (筑波大学臨床医学系精神医学・教授)
斎藤      ([社福]光風会・精神保健福祉士)

第8回「“風”をはこぶ『学習会』」

障害者の人権侵害について PART
―精神障害者の長期入院をどう考えるかー 

2006年1213日、「国連」の総会は、全加盟国賛成により、「障害のある人の人権条約(以下『人権条約』)」を採択しました。  2007年928日、この条約を批准することに、日本は署名しました。
批准するためには、教育、医療、福祉、労働、建築、交通等々、「人権条約」の各条項に関連する国内法を、「人権条約」と各条照合して、見直し、修正することが前提条件となります
2007年12月 当会は、「人権条約」の制定に関わった障害当事者の弁護士 東俊裕氏を囲み、「障害者の権利条約と差別禁止法」をテーマとした「学習会」を企画・開催しました。
未だに障害児・者の多くは、大規模施設に収容されています。
精神科病院には、長期間入院者を含めて約32万人の精神障害者がいます。
この状況を、私たちはどのように認識したらいいのでしょう。
障害児・者だから“仕方がない”と捉えること自体が、人権侵害です。
今回は、人権啓発活動等事業の委託を茨城県より受け、午前の部を「学習会」、午後の部を「シンポジウム」として、下記のように企画・開催します。
 129日は、「障害者の日」です。
この機会に、「国連」が志向する「人権」感覚を踏まえて、皆さんと共に、私たち自身が持つ人権意識を点検したいと考えました。

 

 テーマ:日本における精神病患者の長期入院の実態
    師:松永   晃 (日本精神科看護技術協会茨城県支部長)
伊東  秀幸 (日本精神保健福祉士協会副会長)
司会・進行:松本 直行 ([社福]光風会 地域活動センター「光(KOO)」 施設長)   

 

 テーマ:茨城における精神科病院の「今」

  シンポジスト: 秋野 日登美 (医療法人光風会 回春荘病院 看護師)
伊藤 智子  (医療法人社団有朋会 栗田病院 PSW
吉田 麻理香 (医療法人直志会 メンタルサポートステーション 「きらり」 PSW
松岡 大介  (医療法人精光会 本部)

 

コーディネーター:   斎藤      NPO茨城県精神障害地域ケアー研究会 PSW

7回「“風”をはこぶ『学習会』

障害者の人権侵害についてPARTⅠ
国際生活機能分類(ICF)の課題
障害者権利条約と差別禁止法

2006年1213日、「国連」の総会は「障害のある人の人権条約」を採択しました。
条約の作成には、身体障害者や知的障害者、精神障害者等、障害当事者たちが直接関わりました。世界は、長い年月をかけて、
着実にノーマライゼーション・インクルーシブ社会の実現に向けて動いています。
1971年 知的障害者の権利宣言 可能な限りの通常の生活
1981年 国際障害者年
1990年 障害をもつアメリカ人法(ADA)制定

日本でも、千葉県が2006年に「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」を制定しました。
しかし、障害児・者の多くは、未だに大規模施設に収容されています。精神科病院には、長期間入院したままの精神障害者がいます。
この状況を、私たちはどのように認識するかが問われています。障害児・者だから“仕方がない”と捉えること自体、人権侵害です。
129日「障害者の日」に向けて、条約制定に日本代表として参加した東氏を囲み、「人権とは何か」を考える学習会を企画・開催いたします。  福祉、教育、医療等、人の援助・支援に関わる私たちが、障害児・者や子どもたちの人権を侵害していないでしょうか?
  テーマ:国際生活機能分類(ICF)の課題
― 人権の視座から ー
講師:斎藤 悟  (社福)光風会業務担当理事・サービス管理責任者

テーマ:障害者の権利条約と差別禁止法
        講師:東 俊裕 氏  JDF権利条約委員会委員長・弁護士

 

 

参考図書紹介
「障害者権利条約  Convention on the Rights of Persons with Disabilitiesわかりやすい全訳でフル活用!」
障害児を普通学校へ・全国連絡会 編  翻訳:青梅恵子 講演:大谷恭子
出版社・千書房  定価・1,200

合理的配慮の否定は、差別であることが鮮明になる!
「合理的配慮の否定」というのは、何もしないことが差別になるということです。本来だったら何かしなければいけないのに、
それがなされていないことが差別だ、と規定されたのです。
この規定は、この条約のもっとも大きな特徴です。

6回“風”をはこぶシンポジウム

精神障害者グループホームのQOLと  第三者評価としてのISO
-精神障害者の人権を尊重した生活(くらし)を創りだす-

今年、障害者自立支援法が施行され、福祉には馴染みのない「営業」という言葉が持ち込まれたように、日本の福祉は大きく変わろうとしています。   私たちは、精神障害者の地域生活を支援する際に、市民の精神障害者に対する理解を図ることが必要と痛感し、毎年この地域交流啓発事業を企画・開催してきました。
今回のシンポジウムでは、“第三者評価=地域の信頼性”を創り出している福祉・教育界の先人たちの取組みに学び、精神福祉における第三者評価の意義と課題について考えます。
既に高齢者福祉の世界では、介護保険制度が導入されると同時に、介護事業に民間企業が参入しています。そこでは、判断する力の衰えた高齢者が介護事業所に騙される問題等が起り、“サービスの良し悪しを形にして見せる”が、介護事業関係者の大きな課題となりました。  昨今深刻化する児童虐待やひきこもり、いじめ等、子どもの生育環境にかかわる社会状況が起こり、幼稚園や保育所に対して、幼児教育・子育て支援についてより高い専門性が求められて来ています。“子どもの生育を安心して任せる”基準は何かが問われ始めました。 
何をしているのか部外者には見え難いのが、福祉や教育です。
あなたは、それをどのような形にしたら良いと考えますか?
一緒に考えてみましょう!

 

「日本初 介護事業分野でISOを取得して」
(社福)にんじんの会    理事長  石川 治江
「日本初 幼稚園でISOを取得したのは」
(学法)リリー文化学園   理事長  大久保 博之
「大子町のコミュニティ創りに関わって」
             (医)直志会袋田病院   院  長  的場 政樹

 

「精神福祉における第三者評価の意義と課題」
(社福)光風会生活支援センター「風(FOO)」施設長 斎藤 悟   
精神福祉ワークショップ
- 精神障害者ピアホームヘルパーが創りだすもの -
私たちは、これまで4回にわたり、社会福祉法人光風会が企画・開催する地域交流啓発事業「風をはこぶフォーラム」や「風をはこぶ講演会」を共催し、精神障害に対する新たな視座を提供して参りました。今回は、当会が今年7月に「精神障害者ピアホームヘルパーガイドライン」を世に問うたことを機に、精神福祉に関するワークショップを開催いたします。
21世紀直前まで精神病への対策は、「治療」のみが重要視され、精神障害者の多くが長期間にわたり精神科病院に隔離されていました。現在では、「こころの病」として誰もが罹る病といわれるようになり、精神病を予防の対象として捉える考え方が主流となりつつあります。それが「精神保健」です。しかし、こうした精神障害の捉え方は、精神障害者を「治す」対象としかみていないか、社会から精神病を「なくす」といった、精神障害者に対する差別・偏見を助長しかねない課題を残しています。その結果、未だに多くの精神障害者は、「いま-ここ」にある自分自身を受け入れられず、精神障害当事者としてエンパワメントできないでいます。
精神福祉では、精神病は抹殺・せん滅の思想を前提としない限り人類に出現する病気であり、社会システムや地域社会で共有すべき課題として精神障害を捉えます。精神福祉を実現するための課題は、私たちが精神病・精神障害を正しく理解し、精神障害を抱えながら生きる人の生き方やあり方として認識することが前提となります。そして、一人の人間として「生きる権利」を獲得し擁護できるよう、精神障害者自身が当り前にカミングアウト(Coming Out)する社会を創りだすことです。
精神障害者ピアホームヘルプは、「精神福祉」モデルの具体的提示の一つです。ピアホームヘルプは、援助「する-される」人間関係ではなく、お互いに力や考え・知恵を出し合う「協働」の上に成り立つ取り組みです。精神障害者のピアホームヘルプ活動は、自分自身の持っている力を活かして、仲間を援助・支援する利用者との新しい人間関係のあり様です。それは、カミングアウトそのものです。

 

そこで、今回の精神福祉ワークショップでは、「精神障害者ピアホームヘルパーが創りだすもの」をテーマとしました。旧来のホームヘルプの考え方にない「協働」(Cooperation)という視座を提示し、障害者や高齢者の地域生活支援の新たなあり方を提案いたします。

4回 社会福祉法人光風会地域交流啓発事業

“風”をはこぶフォーラム
-幻聴の科学から「聞こえる声」の体験の共有へ-
(社福)光風会は、2002年から2年間に亘り、地域交流啓発活動の講演会で幻聴を取り上げてきました。
2002年は、筑波大学臨床医学系精神医学教授の朝田隆氏より、「頭の中のこえ-幻聴を科学する-」において、脳機能画像を使い「今、聞こえている」事実を示していただきました。そして、2003年には、ヒアリング・ヴォイシズ研究会代表の佐藤和喜雄氏より、「ヒアリング・ヴォイシズ-聞こえる声と共に成長する道」において、「声」と上手に付き合っていくことを可能とする方法を学びました。
朝田氏の講演では、幻聴が聞こえている時、脳の聴覚機能が「声」に対して反応している事実に、私たちは大きな衝撃を受けました。また、幻聴は幻の音ではなく、実際に聞こえているという証明をしたことによって、幻聴体験のない者が、聞こえている者に対して理解を深める材料とすることが出来ました。  佐藤氏の講演では、聞こえる「声」が主導権を持って一方的に聞こえる者を振り回すだけではなく、対処によっては、聞こえる者の意思や事情が通り、上手に幻聴と付き合うことができること。さらに、聞こえる人自身が「声」と共に成長することを学びました。聴講する以前、幻聴は厄介なものであり、幻聴を深く聞くことは良くないと思っていた私にとって、ヒアリング・ヴォイスの幻聴の捉え方は寝耳に水でした。
生活支援センター「風(FOO)」や笠間焼工房「陽(yoo)」のユーザーが幻聴について、「自分の行動に対して、注意してくれる幻聴がなくなってしまって寂しい」「自分にとって都合の良い幻聴もある」と言う言葉を聞き、二度の講演から「声」と上手く付き合い、ヒアリング・ヴォイシズの捉え方を生かし始めたと感じています。支援者としても、幻聴への捉え方が変わり、ユーザーへ関わる姿勢がはっきりとしてきました。
一方精神医療では、「自分を非難する声」「言うとおりにしないといじめてくる声」等の苦しい幻聴は、無くすものとして治療の対象とされています。しかも、「聞こえる」事実は社会的に理解を得られず、幻聴への体験的な対処も考えられてきませんでした。そのため「聞こえる」事実は否定され、現在も精神障害への差別・偏見へとつながっています。まだまだ、現代社会の中では、「聞こえる」ことを隠したり、無くしたりすることで生きづらさを軽減しようと考える精神医療関係者が多いのが現状です。しかし、聞こえることの苦しい思いを隠し続けなければならない状況にあること自体が、精神障害者の生きづらさを生んでいるのです。

今回のフォーラムでは、別紙のように「幻聴とは何か」の課題について、脳生理学と幻聴体験への対処方法論という二つの視座から皆さんと討論し、精神障害者の地域支援を具体的に創りだしたいと考えます。そして、精神医療や精神保健福祉に関わる私たち自身が、自分の「心のバリア」に気づき、茨城の精神福祉を展開するためのエンパワメントする機会にしていきましょう。

「ヒアリングヴォイシズ――聞こえる声と共に成長する道」

開催にあたって
昨年度の「頭の中の『こえ』~幻聴を科学する~」では、「実際に『こえ』はその人に聴こえていること」を科学的な根拠を踏まえて、筑波大学精神医学教授の朝田隆先生に講演していただきました。
前回の講演を受けて、今回は「ヒアリングヴォイシズ――聞こえる声と共に成長する道」を企画しました。  ヒアリングヴォイシズ(以下、H.V)の活動は、1987年から、オランダの社会精神医学教授M.ロウム博士によって始められました。日本では、1996年に講演者の佐藤和喜雄先生によって、ヒアリングヴォイシズ研究会が創設されました。その後、2002年に日本で開かれた世界精神医学会議(WPA)で発表され、注目を浴びました。
 H.Vでは、以下のことを、研究活動によって証明しています。
*自分自身が主となり、自分なりの幻聴への対処法を身につけること
*薬によって、幻聴を抑えることだけにとらわれないこと
*「こえ」をコントロールすることによって、上手く「こえ」と付き合っていくこと
「『こえ』が聴こえるだけでも辛いと言っているユーザーが、主になってコントロールすることなんて可能なのだろうか。
そもそも、『こえ』はコントロールできるものなのだろうか。」と精神保健福祉に関わる多くの方も、戸惑いや疑問を抱くことでしょう。
しかし、私たちは、「こえ」とつき合い始めたユーザーの話を聞いたり、「こえ」への対処法を一緒に考える中で、「こえ」と共に成長することが可能であると、ユーザーと共に感じてきました。そして、支援センター「風(FOO)」や笠間焼工房「陽(yoo)」の活動をとおして、「『こえ』が聴こえる体験を、安心して共有することができる『居場所』」創りは、重要な支援であると実感しています。
だからこそ(社福)光風会は、地域交流を名目として「施設を一般開放する」といった一般的に公開する発想をとってきませんでした。
自分の生活を考えてください。私たちは普段安心して寛いで過ごす家庭といった「居場所」に、いろいろな人の出入りを無差別に許しているでしょうか。自分の日常生活を脅かす「人権侵害」から守られて私たちが感じとれる心理的空間が、「居場所」となっていることでしょう。
そして地域交流とは、精神障害者自らが地域行事へ参加することや地域内の諸種の施設を利用したり訪問することをとおして、そこで彼らに関わる人たちが、精神障害に対する誤った受け取り方や見方を修正することに気づく関係が生まれることだ と考えています。
そこで私たちは、精神障害と括って「人」を見てきた「心のバリア」へ、再度新たな視座を投げかけるために、この講演会を交流事業として企画しました。
皆さんと一緒に「幻聴をとおした人との関わり」の課題について考えたいと思います。